2026年8月27日
お茶会、何を着ていけばいい?|洋服でいい理由と、白い靴下を持っていくわけを、はじめての方にやさしく解説

お茶会に誘われて、いちばん最初に困るのは、たぶんこれです。
「何を着ていけばいいんだろう」
着物なんて持っていない。買うほどでもない。借りるとお金がかかる。——それで返事をためらってしまう方は、けっこう多いようです。
先に結論だけ書いておきます。初心者向けのお茶会なら、洋服でだいじょうぶです。そのうえで、知っておくと安心なことがいくつかあります。順番に見ていきましょう。
この記事でわかること
- 洋服で行っていいのか、という結論
- 服装に「公式の決まり」はあるのか、という前提の話
- 洋服のときの目安——男性・女性
- 白い靴下を「持っていく」理由
- 外していくもの——時計、指輪、香り
- 着物で行く場合の目安
- なぜ「控えめに」なのか。その考え方のもと
さいしょに——服装に「公式の決まり」はありません
これは先に書いておきたいことです。
茶道の大きな流派である裏千家が公式サイトで公開している初心者向けの解説には、お茶の飲み方やお菓子のいただき方は載っていますが、服装についての規定は載っていません。
つまり、これから書くことは「流派が定めた規則」ではなく、広く慣習として案内されていることです。そして実際のところ、いちばん効くのは会ごとの案内です。招いてくれた方に「洋服でも大丈夫ですか」と一言きくのが、どんな記事を読むよりも確実です。それを聞くのは、失礼でもなんでもありません。
もうひとつ大事な前提があります。お茶会には、気軽な「大寄せ茶会(おおよせちゃかい)」——たくさんの客が入れかわりで一服いただく催し——から、食事を含む正式な「茶事(ちゃじ)」まで、幅があります。この記事が想定しているのは前者です。初心者が最初に行くのは、ほぼこちらになります。
結論——洋服で行けます
「絶対に和服でなければならない」という決まりはない、と案内されています。最近は「着物でなくてもいいですよ」というお茶会が多い、とも言われます。
実際、東京で毎年ひらかれる大きな催し「東京大茶会」の公式サイトには、はっきりこう書かれています。
東京大茶会は初心者向けのイベントとなっていますので、何も用意せずに茶席にご参加いただくことができます。
何も用意せずに、です。まずはこういう会から行くのがいちばんいい、というのはここに理由があります。
洋服のとき、どんなものを選ぶか
目安として、こんなふうに案内されることが多いです。
男性
- ダークカラーの無地のスーツ。あるいは襟のついたシャツを合わせたビジネスカジュアル
- 足元は白い靴下(理由は後述します)
女性
- ワンピース、ブラウス、パンツスタイルなど
- スカートなら正座したときに膝が隠れる丈。座ると裾は思っているより上がります
- おじぎをしたときに胸元が開きすぎないもの
- 足元は白い靴下
避けたほうがよいとされるもの
- カジュアルすぎるもの・露出の多いもの
- ジーンズ……見た目の問題だけではありません。伸びない生地は正座で足を締めつけるので、単純に、早く痺れます。これは実用の話です
- 大きな柄や派手な色……お茶席では、道具と、床の間の掛軸や花がいちばん見られるところです。そこに視線を奪わないという考え方です
白い靴下は「履きかえる」もの
洋服で行くときに、ひとつだけ用意しておくといいのが白い靴下です。着物のときの白足袋(しろたび)のかわりになります。
ここに、ちょっといい作法があります。家から履いていくのではなく、会場に着いてから、茶室に入る前に履きかえる。
外を歩いてきた靴下のままでは、外の汚れをそのまま畳に持ちこむことになります。だから新しいものに替える。そして、素足で上がるのも避けます。畳を傷めてしまうからです。
この「清潔なものに履きかえる」という動作は、茶道の心をあらわす「和敬清寂(わけいせいじゃく)」の「清」につながるものとして説明されることがあります。裏千家の解説では、「清」をこう書いています。
清(せい)とは、清(きよ)らかという意味ですが、目に見えるだけの清らかさではなく、心の中も清らかであるということです。
靴下を履きかえるという小さな動作が、外から中へ切りかえるスイッチになる。そう考えると、少し楽しくなりませんか。
外していくもの
腕時計と指輪
これは、はっきりした実用の理由があります。茶碗や道具を傷つけないためです。東京大茶会の公式サイトにも、こうあります。
お茶席に入る前には、茶器や道具を傷つけないよう時計やアクセサリー(指輪)は外しましょう。
お茶席には、何百年も受けつがれてきた茶碗が出てくることがあります。金属が当たれば、それで終わりです。ですから、これは「格式」の話ではなく、ものを守るための話です。
香水
香水は控えるように、と広く案内されています。理由は、お茶やお香の香りのじゃまをしてしまうから。お茶席では、抹茶そのものの香りや、炭とともに焚かれる香を楽しみます。そこに別の強い香りが入ると、席全体の体験が変わってしまいます。
柔軟剤やヘアスプレーも同じ考え方です。強い香りのものは、その日は避けておくと安心です。
濃い口紅
これも実用的な理由です。茶碗の飲み口に色が移ってしまうため、控えめにするのがよいとされます。飲んだあとに指で飲み口を清める作法があるのですが、濃い口紅だと、そこで拭ききれません。
着物で行く場合
もちろん、着物で行ってもかまいません。着られる方のために、案内されている目安も書いておきます。ただしここから先は格式の高い場を想定した話なので、初心者向けの大寄せ茶会なら、ここまで気にしなくてだいじょうぶです。
男性
- 基本は紋付きの袴
- 着物の色は、鼠色・紺色・利休色など、派手すぎないもの
- 袴はズボンのような形の馬乗袴(うまのりばかま)が一般的。スカートのような形の行燈袴(あんどんばかま)という選択肢もあります
- 羽織は着ません。羽織はもともと外出のときの防寒・埃よけなので、茶席では脱ぎます
女性
- 準礼装である紋付きの色無地や訪問着に、袋帯を合わせるのが基本
- 気軽なお茶会なら、上品な小紋に名古屋帯という組み合わせも
いちばんのもと——「主役は、自分ではない」
ここまで「控えめに」「派手すぎないものを」と書いてきました。その理由をひとつにまとめると、こうなります。
お茶席で、客は主役ではないから。
着物を選ぶときの考え方として、亭主(ていしゅ・招く側)より格上の装いにならないようにするのがマナーだ、と案内されます。招いてくれた人を立てる、という考え方です。同じように、客のなかでいちばん上位に座る正客(しょうきゃく)より格上にならないようにも気を配る、とされます。
これは服の話に見えて、じつは茶道の考え方そのものです。利休が残したとされる利休七則(りきゅうしちそく)の最後は、こう結ばれています。
相客(あいきゃく)に心せよ
裏千家の解説によれば、「相客」とはいっしょに客になった人たちのこと。正客の席にいる人も末客の席にいる人も、おたがいを尊重しあって楽しい時間を過ごしなさい、という意味です。
香水を控えるのも、派手な柄を避けるのも、時計を外すのも、突きつめれば全部これです。自分より、その場と、そこにいる人のほうを見る。服装のマナーというのは、その気持ちを形にしたものにすぎません。
おわりに
まとめると、初心者が最初のお茶会に行くとき、必要なのはこれくらいです。
- 手持ちの、少しきちんとした洋服
- 白い靴下(会場で履きかえる)
- 時計と指輪は外す
- 香水はつけない
- 持っていければ、懐紙と菓子切り。なくてもいい会が多い
懐紙と菓子切りと扇子は、そろえても数百円から手に入ります。百円ショップで見つかることもあります。
そして、迷ったら聞く。「洋服で行っても平気でしょうか」と。その一言で、たいていの心配は消えます。
服装で立ち止まっているうちに、お茶を飲む機会そのものを逃してしまう——それがいちばん、もったいないことですから。
参考にした情報
- 裏千家 公式サイト「はじめてのお茶」/「お茶の心」(和敬清寂・利休七則)
https://www.urasenke.or.jp/textb/shiru/beginer/ - 東京大茶会 公式サイト「参加するにあたって」(時計・指輪/白い靴下・足袋/初心者は何も用意せず参加可)
https://tokyo-grand-tea-ceremony.jp/join.html - いばせん「茶道のマナー」(着物と洋服の具体的な目安)
https://www.ibasen.co.jp/pages/2305_sado_manners - All About「お茶会での服装やマナー持ち物について5つのポイント」(洋服可・香水・口紅・持ち物)
https://allabout.co.jp/gm/gc/454888/ - 和樂web「着物じゃなくちゃだめ?日本のお茶会に行く前に知っておきたい持ち物と服装Q&A」(靴下の履きかえ・ジーンズ)
https://intojapanwaraku.com/gourmet/2552/ - きものレンタリエ「お茶会での着物の選び方と押さえておきたい基本ルール」(亭主・正客より格上にしない)
https://kimono-rentalier.jp/column/special/ocyakai-kimono/
服装の作法は流派・会の性格・季節・地域によって変わります。この記事は初心者向けの大寄せ茶会を想定した一般的な目安です。参加される会の案内があれば、そちらを優先してください。